うぇるたいぷろぐ

うぇるあめのタイピング関連ブログ

MENU

ローマ字入力において「ん」は「n'」で打てる

ほんとです!PCユーザーはためしに打ってみてください。

というわけで今回はタイピングゲームプレイヤーの観点から、「ん」という文字の入力の話をします。
Twitter等では個人的によく話しているトピックですが、まとまった記事にしたことはなかったので。

「ん」の変換について

そもそも「ん」という文字は、コンピューター上でいかにして入力できることになっているのでしょうか。

日本語のローマ字入力における標準的変換仕様は、かつてはJIS規格(JIS X 4063:2000)によって定められていました。Wikipediaによると、この規格は「必ず実装しなければいけない入力方式」「追加で実装したほうがよい入力方式」を指定し、ベンダーがローマ字変換表として実装すべき仕様を文字ごとに定めていたそうです。

「ん」の変換表はこのうち「必ず実装しなければいけない入力方式」に含まれており、そこでは以下の3種類が指定されています。

n / nn / n'


ただし「ん」の変換仕様は後に続く文字の内容によって変化するため、このうち「ん」を「n」で打つ方法は例えば以下のケースでは使用できません。
・続く文字が母音(a,i,u,e,o)、yであるとき
「ん」を連続で打つ場合
・入力の末尾であり、続く文字がないとき

なおここでは指定されていませんが、ローマ字変換システムは「xn」によって「ん」を入力できるようにしている場合も多いです。

よって、主要なローマ字変換システムにおいて「ん」の文字を入力する方法は、次の4つにまとめられます。

n(子音等が続く場合に限る) / nn / xn / n'


なおこのJIS規格は2010年1月20日に廃止済みであり、現在は拘束力のある規格としては機能していません。しかしMicrosoft IMEなど主要な現行IMEはこの変換表の大部分を受け継いでおり、「ん」の仕様についてもこの指定は受け継がれています。

「ん」という文字は、決して「n」と「nn」によってしか入力できないわけではないのです。

タイピング競技上の実用性

とはいえ日常的な入力作業において、基本的に「ん」を「nn」以外で打つ必要がある状況は特に存在しないでしょう。よってそれ以外の入力方法を検討するのは、基本的にタイピングゲームで高スコアを出すなどの目的があるときに限られると思います。

実のところ「nn」という入力方法は、高速でタイピングを行おうとする場合にはあまり望ましい方法ではありません。同一キー連打という負担の高い動作を伴い、局所的な減速が発生して打鍵リズムが崩れやすくなるためです。
このためタイピングゲーム上級者の多くは「最適化」と呼ばれるテクニックの一環として、状況に応じて「ん」を「xn」で打ち分ける能力を身に着けています。好みもあるので全員が採用しているわけではありませんが、上のレベルに行けば行くほどポピュラーな技術となっていることは間違いありません。


それでは、「n'」の場合はどうでしょうか。こちらを採用している人は、正直タイピング上級者でもほぼいないといってよいと思います。そもそもこの仕様を知っている人さえ自分の体感では少数派です。
しかしこのいかにも実用性のなさそうな入力法、一定の状況下では十分にテクニックのひとつとして採用する価値があります。

前提として、キー配列はUS配列など'(アポストロフィ)をShiftなし1打鍵で打てるものである必要があります。日本語配列ではShiftの押下を挟まなければならず、とても実用に堪えるものではないからです。しかし例えばUS配列であれば「n'」という文字列は右人→右小といった指の流れでスムーズに打つことができるため、かなり有効な入力方法へと様変わりします。少なくともnを2連打するよりは理論上ずっと早く入力できることがわかるかと思います。

このn'打鍵法は、たとえば次のようなシチュエーションで高い効果を発揮します。
前後の流れから「xn」を用いることが難しい場合。特に「せん」「ぜん」「れん」など左手が続くときにsexn, zexn, rexnといった打鍵を行うことは難しく、sen', zen', ren'とした方が打ち方としてなめらかになる。
文の末尾に「ん」が来る場合。「xn」が左手→右手と両方の腕を同期させる必要があるのに対し、「n'」は右手をスナップを利かせながら一振りするだけで入るため、ギリギリの状況でねじ込むときに威力を発揮する。

このようにn'入力はxn入力を補う役割を持ったテクニックとして十分実用化可能であり、実際に私自身は積極的に活用しています。


それではこのテクニックがなぜ上級者の間で一般化していないのか。
その最大の原因は、そもそもこの入力に対応しているタイピングゲームが非常に少ない、というところに求められるでしょう。もちろん変換ありの実用種目では好きに使うことができますが、それ以外のタイピングゲームで「n'」の入力を実装しているゲームは、私の知る限り『Typing Tube』と『ごんタイピング』の2種しか見当たりません。『e-typing』『タイプウェル』『Weather Typing』『寿司打』など、積極的に記録が競い合われるようなゲームにおいてはまったく使用することができないのが実情です。せっかく習得したとしても、使う場所がごく限られていれば元も子もないわけですね。無念。


右手を振るだけで「ん」が一発で出せるn'入力には、他の方法にはない独特のメリットが存在しています。入力を単純化できることから、打ち心地もかなり楽です。
いずれは対応してくれるタイピングゲームが増えてくれるといいな、と個人的に思っています。